UFO隠岐クルージングに参加して

KAMAKURAU 平賀 威
 UFOの長期クルージングには今年で3回目の参加となった。いずれの場合も、スケジュール、ナビゲーション、天候の判断、食事など何の問題もなく、極めて安心して、安定した航海を楽しむことができた。そのコツは何であろうか?この辺で川島流長距離のクルージングのコツを思いつくまま整理してみようと思う。
  往路 5月9日〜5月16日 上関〜門司〜室津〜出雲大社〜隠岐菱浦
  復路 5月30日〜6月4日 那智勝浦〜鳥羽〜下田〜熱海〜油壺
 
オーバーナイトでも良く食べてよく飲む、元気なお爺さん達。
 
(1) 朝出港し夕方入港する。
日程が許す限りなるべく沢山の未知の場所に寄港する。
有名観光地では名所旧跡を訪れ、土地の文化遺産に触れ、見識を広めることができる。またクルーの交代にも便利である。瀬戸内海、九州沿岸のように魚網の敷設が心配されるところや、未知の沿岸海域では夜間は走らない。ただし、1日の航程があまりにも短すぎないようにすることも考慮し、かつ、クルーメンバーの技量、海域の条件など(太平洋沿岸、日本海などの外洋で魚網などの心配がなければ)を考慮し、オーバーナイトもあり。今回は室津〜出雲大社の120Mと復路の鳥羽〜下田100Mはオーバーナイトとなった。川島オーナーの常に航海の安全を優先するロングクルージングの基本姿勢である。
(2) 全航程の海図を持っており、艇が今いる海域の海図をすぐに見られるようチャートテーブル上にセットする。港の入港時には、詳細図で入港路の確認する。GPSの画面表示はあくまでも参考。常に海図上の経度、緯度で艇の位置と安全を確認するのが川島オーナーのナビゲーションの基本である。
(3) 石廊崎での参拝
石廊崎を交わすときは往きもかえりも必ず石室大権現神社の崖下に寄り、お賽銭を投げて神妙に二礼、二拍手、一礼し、往きは航海の安全祈願、かえりは感謝の気持ちを捧げる。なお、川島オーナーは毎年必ず陸路からのお参りも欠かさない。
(4) インスタント食品は使わない。
行く先々で食材を調達しすべて調理する。そのため家庭のキッチンでは普段見られないあらゆる調味料がそろっている。また、UFOには冷凍機があり、あらゆる食材を保存できる。特にいつでもビールと白ワインが冷えているのは素晴らしい。またクルーの皆が何かひとつ以上の得意な調理の義務を負わされ乗船する。そのため毎回の食事は非常にバラエティに富んでおり、食事が大きな楽しみの一つとなっている。今回も川島オーナーは、体重が3Kg増えてしまい、帰ってからすぐにトレーニングを再開し減量に努めていた。
(5) 行く先々では知り合いをつくる。
これは川島オーナーの過去の積み重ねに負うところが大きいが、積極的に交わることが大切である。行く先々の港に知人がいて、ごみの処理、食材の調達、燃料、風呂屋、トイレ、コインランドリー、食事処、観光スポット等の情報を親切に提供してくれる。総じてローカルの人達は親切で、買物や観光のための自転車や自動車の提供までしてくれる。
(6) ドジャーは必須である。
UFOの特注ドジャーはコックピットの2/3を覆うことができる。そのため、オートパイロットとの組合せで、雨でもほとんど濡れずに航海を続けることができる。更に、ドッグハウスのハッチをいちいち閉める必要はなく、キャビン内にカッパの水を持ち込まなくてもすむ。また、乾燥機を積んでいるので、陸電があるところでは雨の日もキャビンの中はドライで快適である。私も今回15日間の航海で一回もカッパを使用しなくてすんだ。
(7) 給油口はコックピットの床面にある。
私の知る限り、ほとんどの艇の給油口はデッキ上にあるが、UFOの場合、給油口がコックピットの床にあるため、少々荒れた海上でも極めて楽に給油ができる。もちろんドジャーがあるので雨の中の給油もOKである。
(8) 天気図は9:10、16:00、22:00の3回必ずとる。
これは航海中でも、酒の入った宴会中でも、睡眠中でも必ず実行する。もちろん翌日の出港を決める上で欠かせない。
(9) 計画運行。
クルーの多くはまだ現役の仕事持ちで休暇をとって参加しており、交代しながらつないでゆくので計画運行が非常に重要な要素になる。したがって、よほど風に恵まれない限りは機帆走し、平均の艇速は6Ktを確保する。そのため燃費から計算して、最長レグに必要な燃料の格納場所が必須である。今回スターンハッチを改造して20L×7=140L+60L=200Lの格納スペースを確保している。
また、天候待ちが予測されるので、1週間を5日として2日の余裕を見たスケジュールを組む。今回も作成したスケジュールに対しほとんどon scheduleだった。もちろん、予定通り6月4日14:00ピッタリに油壺へ帰港した。
(10) ミュージックはOldies。
川島オーナーお気に入りのOldiesがいつも流れている。とかく退屈になりがちな航海にBGMは欠かせない。我々の世代にとって、海上で冷えたワインを飲みながら聞くSinatra, Platters, Presley, Ray Charlesはたまらない魅力である。
(11) 航海日誌は毎日必ず書く。
今回は大谷さんが担当した。海の上でも陸の上でも暇があると携帯のメールを使って、現在地、港の入出港時刻、毎日の行動、主な出来事、などを詳細に打ち込み、送信していた。そのため帰港後にまとめた「航海日誌」は非常に正確で、臨場感のある記録となった。
(12) 食器洗いのニューアイデア。
航海中の食器洗いの作業はかなり大変であった。そのため、川島オーナーはスターンから海水をくみ上げるポンプを特注でオーダーし、コックピットの中まで配管し、コックをひねればいつでも無限に海水が使える装置を取り付けるとのこと。レース艇では考えられないことだが、「それでもUFOは速い」といった人がいた。全くその通りである。
(13) まとめ
川島オーナーの豊富な経験と実績、周到な計画、安全を優先するナビゲーション技術、冷静な判断、エンターテイメント性により、陸上となんら変わりのない生活を楽しむことができた。まさに艇名の”Unidentified Floating Object”の名にふさわしく、このままいくらでも遠くへ航海できるように感じたのは私だけではないと思う。川島オーナーバンザイ!!
  以上
室津から120M、22時間のオーバーナイト、出雲大社港に到着。
抜けるような青い空と海が待っていた。
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